水は人間活動の前提条件であり,農業にとっての生命線です。「水」は量に限りのある貴重な資源であり,同時に重要な自然環境要素でもあります。水利用における21世紀のキーセンテンスは,「節度ある水資源の開発を行って,水を有効かつ高度に利用するとともに,汚染や汚濁を防止し,水の恩恵を受けているあらゆる主体の間で均衡ある水の配分を行って持続可能な水利用体系を築くこと」であるといえます。このためには,水資源を広範な観点から統合的に管理する「統合的水資源管理(Integrated Water Resources Management)」の考え方が重要です。地球規模的に進行しつつある水危機(Water Crisis)に対して,世界水会議(World Water Council, 2000)は,次のような警告を発しています。
Today's water crisis is widespread, and continuing with current policies for managing water will only widen and deepen that crisis.
...........World Water Council, 2000
(今日直面する水危機は拡大の一途を辿りっており,現在のような水管理の方法を続けていけば危機はますます広がり深刻化するだけだ。)
水資源利用工学研究室では,このような警告が発せられる以前から,
Controlling and managing water, based on hydro-environmental models, must be innovative grand tactics to combat the water crisis.
.... Water Resources Engineering Lab., since 1995
との考えに基づき,水危機に対抗するには,水理・環境モデルを用いた科学的合理性 に立脚した水の制御と管理が重要であると主張してきました。以来,このような視点に立って,主として工学的な立場からさまざまな基礎的,応用的な研究に取り組んでいます。
より具体的には,@水環境をモデリングする,A水環境をコントロールする,という二つの大テーマを掲げ,水資源が織り成す水環境という視座から,水のダイナミズムを考慮した最適な水資源・水環境管理のあり方とその方法論を提案することに研究の主眼を置いてきました。